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【不定期連載】高校教師からミニバスコーチへ

Vol.1 子ども達との距離で失敗した過去を振り返る

審判教育のプロからの転身

地元のバスケットボール強豪高校を退職後に、十数年前の元教え子から「ミニバスのコーチお願いできませんか?」と言われたのが最初のきっかけだった。

元教え子の子どもが小学校4年生でバスケットボールをやりたいのだが、通っている小学校にバスケットボール部が無く、近くにミニバスケットボールのチームも無いらしい。

年齢を考えて今更小学生を指導するのはかなり抵抗があったが、週に1回で事務的な事はやってくれるという事だったので前向きに考えていた。

熱血指導で高校生を教えていた私としては、小学生を指導するのは簡単で基本的な事を楽しく遊びながら教えればいいかなという軽い気持ちで返事をし、承諾した。

高校生と小学生の決定的な違いを痛感した1ヶ月

最初に教えることになったのは元教え子の子どもとその友達を含めた6人。 全員バスケットボールほぼ初心者で遊びを交えた基本を日曜の昼間に2時間程指導した。初日にある壁にぶち当たる。

高校では基本を終えた生徒達を相手に応用やチームプレイや戦略の大事さを指導するのに対し、小学生に基本的な事を指導するのがこんなにも疲れ、頭を悩ませるとは当初思いもよらなかった。特に悩んだのは理解力の違い。

言葉で何度も説明し、実際に練習方法を見せても小学生の大半は理解できていない。まあ試合経験も無ければルールもよくわかっていないので当然といえば当然ではあるが、高校生を相手に30年以上指導してきた私としては、まず言葉選びと分かりやすさを重点に置かなけれなばらないと痛感。

バスケットボールの基本を1から勉強し直さなければならないと思い、急いで本屋にて初心者向けのバスケットボールの本を数冊購入。軽い気持ちで承諾した自分を後悔すると同時に本気で子ども達と取り組む決意をする。

指導方法は失敗の連続

「遊び」を多く取り入れた練習をすると、子ども達は笑いながらバスケットボールができるが、上達速度は遅い。厳しい練習を取り入れると「頑張る子」と「頑張らない子」の温度差ができてしまいチームのまとまりが薄くなってしまう。

高校生を指導していた頃は比較的同じ気持ちで取り組む生徒ばかりなのでこんな悩みは一度も感じたことは無かった私にとって「練習方法」は常に頭を悩ませる課題であった。

チーム発足当初は子ども達を増やそうと思って「遊び」をメインに練習方法を考えていたが、それでは子ども達はどんどん増えていくが、上達は感じられない。3ヶ月を過ぎた頃には最初の子ども達が友達を誘い20人位に増えていたが、遊び半分で来てる子達は度々練習を休み、少しきつい練習を取り入れると、練習についていけなくなり辞めてしまう。

この「辞めてしまう」に自分はかなりのダメージを受けていた時期があった。

せっかくバスケットボールに興味を示して練習に来てくれる子ども達に「遊び」では無いバスケットボールの「楽しさ」を教える事ができなかった当時の私は怠慢だったのであろう。どうしたら小学生のこの時期にバスケットボールの「楽しさ」を感じ、この先長くバスケットボールを続けてもらえるか。こればかりは考えれば考えるほど、子ども達に気持ちは伝わらなかった気がする。

それでも中にはバスケットボールを心から「楽しむ」をみつけた子どもが上達していくのを見て、その「楽しむ」を見つけた子ども達に合わせた練習内容に変えた時に、先が見えた気がしたのを覚えている。

初めての試合、衝撃と惨敗と涙

1年ほど経ち、子ども達がある程度上達した頃、保護者の一人が連盟に登録して大会に出たりしましょうと言ってきた。体育館を借りたり市への登録等の事務的な事は全て元教え子だった保護者がやっていてくれたので詳しく分かってなかったのだが、連盟に登録しなければ大会に出れない事をそこで知った。

だが今の子ども達でまともな試合ができるんだろうか?と疑問を胸に経験も大事だなと思い登録。そして翌月5〜6年生だけを連れて初めて練習試合を行うことになる。相手チームは20年以上前からあるミニバスチームで、過去には全国大会にも出場経験のあるチームと近隣の市から来たチームとうちの3チームでリーグ戦を行うことになった。

そこで目にしたのは衝撃的な相手チームのコーチ達だった。

子ども達に対してまるで軍隊の様な指導、罵倒、圧力、横柄な態度に加えパイプ椅子を蹴ったりミスをする子ども達を突き飛ばしたり、、、、、相手チームの子ども達が楽しんでバスケットボールをしている様には見えなかった。

更にそれを見た自分のチームの子ども達も萎縮してしまい、顔がこわばっている子も何人かいた。その負の緊張をほぐそうと試みたがそういった経験の無い自分には子ども達に効果のある言葉を伝える事ができなかった気がする。試合は2試合とも惨敗。得点できたのは2ゲーム合わせてたったの2本、4点だった。

試合後の子ども達の「顔」

試合が終わった後に子ども達を集めて顔を見たらあることに気づいた。「楽しむ」を見つけた子と、「遊び半分」で練習に来てる子の顔が全く違っていた。「楽しむ」を見つけた子ども達は試合後に目に涙をためて黙って呆然と前を向いている。「遊び半分」で練習に来てる子ども達は世間話をしたり遊んでいる子もいた。

そこにバスケットボールの試合は楽しいんだと笑っている子どもは一人もいなかった。それに気づいた瞬間、自然と涙が出た。高校生が試合で負けて涙を流しているのを何百回と見てきたが、小学生の小さな体で流す涙は全く違って見えた。そう、流している涙の質が違う。

高校生達が試合後に流す涙は、「試合に勝った負けた」がほとんどだが、「楽しむ」をみつけた子ども達の流している涙は、「試合に負けた」ではなく、「楽しい」はずのバスケットボールで、同じ小学生に、同じ競技で、圧倒的な力を見せつけられ、試合で楽しさを感じ取れなかったのであろう。

私はバスケットボールの試合で感じる「楽しさ」を子ども達に教える事ができていなかった。

私がこれまでに子ども達と接した「距離」は間違っていた。

数日後の練習で、この「負け」を機に変わっていく子ども達を見て、教師時代には得られなかった「バスケットボールの楽しさ」を追求する決意をする。

自分は子ども達に「子供扱い」をしすぎ、時には友達のような距離で接し笑い合い、バスケットボールを辞めない様に「遊び」を「楽しい」と思い込み、子ども達にとってのバスケットボールの「楽しさ」の本質を勘違いしていた。

子ども達といっしょに「楽しむ」を学ぶ決意

「楽しさ」を見つけた子ども達の真剣な顔で流す涙を見た時に、バスケットボールを教えてくれるおじさんと近所の子ども達からバスケットボールのコーチと選手にならなければいけないと思った。

Vol.2「やる気のある子ども達と練習時間の見直し」へ続く


この連載は2017年に元高校教師であり、退職後はミニバスケットボールのコーチを14年続けられた山野氏にミニバスネット編集部が取材とインタビューをし、ミニバスネットが編集したものです。

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